研究テーマ


 当研究室では、適応制御系の設計法に関する研究および応用として、運転中にパラメータ変化が顕著な電動機システムやロボットアーム等のメカニカルシステムに対して、コンピュータを利用してインテリジェントな適応制御システムを実現する研究を行っています。

 

1.  着座型倒立モビリティ(PMR)の制御および倒立ロボットの移動制御
                   

  立ち乗りで知られるセグウェイは対象の物理パラメータを既知のノミナル値で制御系設計される.そのために重量・慣性変化に十分な対応ができず重量制限が設けられている.研究室では60kg程度の重量差がある場合ノミナルモデル使用の設計では安定化が不十分であることを確認している.一方,研究室提案の手法は対象を未知パラメータ系として扱うので,重量制限を外せる点が大きな特徴である.今後,PMRの安定化走行に適した制御器設計法として,VSS適応制御設計理論が有効な手段であることを実証したい.(学部・大学院) 

 

2.  回転型倒立振子・二重倒立振子のオートチューニング及び適応制御
                      

                          

   倒立振子はロケットの簡単なモデルであり安定化制御法に関して多くの研究が成されている。制御中に振子が伸縮し慣性モーメントが大きく変化する場合には、固定の制御器では制御性能の劣化を招くことがある。そのような場合や対象の物理パラメータが未知の場合などに対応できるコントローラのチューニングあるいは適応制御系を実現する。
 倒立振子システムがうまく制御されている場合、システムの入出力情報は非常に少なく、このような情報から動特性の変化をうまく検知することは非常に困難である。そこで、制御中に安定性を失わない程度の有効なトルク外乱を重畳することにより運動データをうまく検出することによりオートチューニング・適応制御系を実現している。条件の悪いフィードバック制御系のループを切らずにチューニングが出来れば、対象の運転を中止することなく制御器の更新が可能となり産業界のみならず、身近な分野でも応用範囲は広いと考えられます。(大学院)

 

3.  つま先付きロボット脚の屈伸運動制御
                           

                          

   VSS適応制御理論により荷重変化があっても運動性能が維持できるようなロボット脚を実現する。手始めに、つま先部を備えたロボット脚により安定範囲の狭い状況下での運動制御を考える。すなわち、つま先立ちの状態で脚が倒れないような屈伸運動を行わせる。このとき、脚の前後への重心変化が少なく安定性の良い制御系を実現する。
  このような制御系実現の為の理論として、前述した倒立振子システムの適応制御理論を使用する。通常、つま先部の面積は小さい為、適当に屈伸動作を行うと脚の重心が前後方向に移動するため、直に不安定状態となり脚が転倒してしまう。しかし、VSS適応制御理論を適用することにより重心移動を小さく抑え、安定な屈伸運動が可能となる。
  また、つま先部があることにより二脚運動(歩行など)は人間のような自然な動きが期待できます。(大学院)

 

4.  適応型モータ可変速コンピュータ 制御システム
                         

   運転中に特性が大きく変化する対象に対しては、制御システムを最良に保つために制御器を状況に応じて変更する適応制御が有効です。
 従来の適応制御では、目標応答の実現のみが重視されるような設計がなされていた為に、特性が大きく変化する対象に対しては、制御システムを最良の状態に保つことが難しい場合が生じます。研究室では
安定度指標に基づく適応制御システムの設計法を提案し、また慣性負荷が大きく変化するモータシステムの実験を通してその有効性を実証しています。慣性負荷が大きく変化する対象は産業界のみならず、電気自動車などの分野でもみられ応用範囲は広いと考えられます。(大学院)

 

5.  スリップ負荷を伴うDCモータの適応 制御
                         

   電気自動車等の乗り物ではすべりやすい路面などで急発進・急制動によってタイヤと路面の間でスリップが生じる。この際によく用いられるのがトラクションコントロールでスリップ率を適正な範囲におさめるような制御方策が研究されている。研究室では、簡易なモデルとして負荷部分にスリップが発生するようなDCモータ実験セットを作製し、スリップ率や慣性モーメント(重量)が未知あるいは大きく変化する場合でも外乱オブザーバを用いた適応制御によりスリップ抑制可能な制御法を提案し、その有効性の検証を行っている。(大学院)

 

6.  ロボットアームによる力制御システムおよび遠隔操作による力制御システム
                                   

 ロボットアームは自動車の組み立てラインなどに導入され、その地位を築き上げてきました。更なる発展のためには、人の技を代行できるような柔軟な作業を実現することが望まれます。研究室では、ロボットアームの位置制御システムを基本にして、アームが作業中に何かにあたっても相手を傷つける心配のない力制御システムを実現しています。また、災害救助や極限作業において必要な遠隔操作を目的にマスタ・スレーブアーム力制御システムの実現を行っています。今後、ロボットが更にフレンドリーになり、傍らにいても違和感がない存在になるためには、力の制御を完璧なものにする必要があります。(学部)

 

7.  作業中に運動特性が大きく変化するダイレクトドライブ・ロボットマニピュレータの適応制御
                            

  DDアームは従来のロボットアームと比べると、ギアがないので高速動作に適しています。反面、アクチュエータに大きなトルクが要求されます。さらに、運動力学固有の非線形性が強く現れる特徴があり、一般には制御が難しいアームになります。現在は、いろんな制御が試されている段階であり明確なものはまだありません。研究室でもいくつかの新しい制御方式を試しながら、制御性の比較を行っています。制御性能の比較を公正に行うために学会標準アームを使用しています。コンピュータによってアームを運転しながらパラメータを逐次推定し、同時に最良の制御器を自動構築するインテリジェントな調整を行うことで制御性能を改善しています。(学部・大学院)

 

8.  機械システムパラメータのオンライン同定
                       

  いろいろな制御システムの中枢部となる制御器は対象の数式モデルに基づいて設計される。ロボットなどの機械システムも例外ではない。この数式モデルには微分方程式や伝達関数が用いられ、これらの係数を定める作業はパラメータ同定と呼ばれる。制御器設計やパラメータ同定は制御システム構成において必要不可欠なものである。研究室ではロボットアームのような機械システムの運動を記述するための基本パラメータ推定手法についても研究を行っている。コンピュータによる信号処理法として、機械システムの適応制御に有用なオンライン同定法についても比較・検討を行い成果を発表している。(大学院)

 

9.  力感覚を感じ取れる遠隔操作用マスタ・スレーブハンドシステム
                   

  マスタ・スレーブハンドは宇宙空間や海洋など、人間が自由に動けない環境下において作業を代行するための有効な手段です。このシステムではマスタ(操作側)の動きがスレーブ(作業側)に伝えられ作業が進行します。マスタではあたかも実際に作業をしているような感覚が得られる必要があります。研究室では独自の適応制御を用いて操作感覚を劣化させることなく、かつ安定な動作を保証するマスタ・スレーブハンドシステムを実現しています。
 スレーブからの力信号計測に遅れ時間が
あり制御系が劣化するような場合、仮想スレーブモデルを構築してマスタの力を伝達する操作システムも有効と考えられ、このようなシステムを開発している。今後、熟練者による研磨技術の自動化や遠隔医療などの分野においても応用が期待できます。(学部・大学院)